結局どれがいいの?
虫除け作用が期待できる精油の選び方(前編)
多角的にアプローチできる点は素晴らしいのだけれど、確かに選択に迷うこともあると思うわ。
今回は、「蚊に対する忌避効果の高い精油」をみていきます。
含まれる芳香成分の割合は各書籍や各メーカーにより異なります。
生育状態や環境などにより芳香成分は変化するため、記載の割合は一つの目安としてご参照ください。
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精油の安全性を確認しよう
まずは、精油を選択するために安全性について説明します。
高濃度で含まれる場合、使い方に注意が必要な精油成分のグループは下記のとおりです。
ココに注意
下記の成分を高濃度に含む精油は低濃度・短期間で使用しましょう。
また、使用可能な対象者か確認しましょう(乳幼児、妊婦、持病のある方などへは使用しない)。
- ケトン類
- アルデヒド類
- フェノール類・フェノールエーテル類
では、下記よりひとつづつ確認していきましょう。
ケトン類
ケトン類に属する成分の中でも種類により危険度は異なりますが、神経毒性と肝毒性(肝臓に対する毒性)をもっています。
そのため、高濃度・長期間の使用は避けましょう。
てんかん、妊婦、授乳中の方、乳幼児は使用できません。
特有の作用を持つ成分も多いグループのため、各精油ごとに作用を確認しましょう。
主要成分:カンファ―、メントン、ツヨン、ヌートカトン など。
期待できる作用:粘液溶解作用、去痰作用、脂肪溶解作用、鎮痛作用、胆汁分泌作用、瘢痕形成作用、通経作用など。
アルデヒド類
粘膜・皮膚刺激、肝毒性が強いグループであるため、高濃度・長期間の使用はできません。
肌を荒らす可能性があるので、低濃度・短期間で使用しましょう。
アルデヒド類は保存状態が悪いとすぐ酸化して異なる物質に変化し、皮膚刺激やアレルギーを起こすことがあります。
主要成分:シトロネラ―ル、ゲラニアール、ネラール、ベンズアルデヒド など。
期待できる作用:抗菌作用、抗ウィルス作用、抗真菌作用、抗炎症作用、鎮痛作用、血圧降下作用、鎮静作用、解熱作用、消化促進作用など。
フェノール類・フェノールエーテル類
フェノール類
フェノール類は刺激臭ともいえる鋭い香りがあります。
作用も強力で、精油中で最も強い抗菌作用、抗ウィルス作用、抗菌作用を持っています。
なお、粘膜・皮膚刺激、肝毒性が強く、高濃度・長期間の使用はできません。
肌を荒らす可能性がありますので、低濃度・短期間で使用しましょう。
主要成分:オイゲノール、チモール など。
期待できる作用:鎮痛作用、麻酔作用、免疫強化、神経強壮、駆虫作用 など。
フェノールエーテル類
神経毒性、肝毒性がありますので高濃度・長期間の使用はできません。
低濃度・短期間で使用するようにしましょう。
抗菌作用、抗ウィルス作用、抗真菌作用はフェノール類の方が強いです。
主要成分:メチルカビコール、アネトール など。
期待できる作用:鎮痛作用、鎮痙作用、筋肉弛緩作用、エストロゲン様作用 など。
乳幼児への使用不可 オキサイド類
1.8-シネオールに代表されるオキサイド(酸化物)類が豊富に含まれる場合、乳幼児への使用はできません。
「安全」は「比較的安全性が高い成分」
では、次の項目より比較しやすいようグラフで説明していきます。
「比較的安全性が高い芳香成分=安全」と表記していますが、見やすくするためであり100%安全を意味するものではありませんのでご注意ください。
それは、オキサイド類(1.8-シネオール、リナロールオキサイド)を微量含む程度で、そのほか注意が必要となる精油成分グループが含まれていないからです。
蚊を寄せ付けない芳香成分を多く含む精油3種
芳香成分のうち、シトロネラールやシトロネロールには蚊を寄せ付けない働き(忌避作用)があるといわれています。
この二つの成分は含まれる量に応じて高い忌避作用を発揮します。
なお、シトロネラールはダニにも忌避作用を発揮しますが、アルデヒド類に属し皮膚刺激に注意が必要な成分です。
シトロネラ―ルとシトロネロールを多く含む3種の精油特徴は下記のとおりです。
ココがポイント
シトロネラ:安全性と忌避作用は中程度
→外出時の虫よけスプレーに。
ゼラニウム:忌避作用はあるが肌にも優しい
→肌に塗布する虫除けジェルに。そのほかさまざまな用途に使用できる。
ユーカリ・シトリオドラ(レモンユーカリ):皮膚刺激に注意が必要だが忌避作用は高い
→野外で過ごす時間が長い、虫が多い環境での虫除けスプレーに。
では、上記の用途がお勧めできる根拠をみていきます。
おしらせ
昆虫忌避作用を持つ精油の有効性については、現在さまざまな検証が行われています。
シトロネラ―ルやシトロネロールなど、一部の精油成分に有効性が示唆されているものがある一方、精油の全構成成分で忌避効果を発揮しているものもあるようです。
また、昆虫の種類によっても精油の忌避効果は異なります。
そのため、忌避効果そのものを比べることは難しいのですが、なるべく根拠を明示してみたいと思います。
肌への刺激性やそのほかの用途に使えるかなど、ご自身に最適な精油を選ぶ際の参考にしてみてください。
シトロネラ かるい甘さをともなうレモンっぽい香り
万人に好まれるような、軽い甘さがあるレモン様の香りです。
シトロネラの最も知られた使い道は「虫除け」。
複数の実験においてシトロネラの昆虫忌避効果が示唆されています。
粘膜・皮膚刺激を持つアルデヒド類を約40%含むため、虫除けジェルを作成する際はごく低濃度がよいでしょう。
虫よけスプレーや芳香浴であれば問題なさそうです。
シトロネラは蚊・ダニへの忌避作用を発揮するシトロネラ―ルとシトロネロールの両方を含んでいます。
その他、複数の実験からシトロネラの昆虫忌避効果が示唆されています。
※AEAJでは、精油を肌に直接塗布する場合、濃度は1%以下を推奨しています。
精油を高濃度で皮膚につけると刺激となる場合がありますので、使用量や濃度にご注意ください。
なお、虫よけ作用以外にも、シトロネラにはリフレッシュ作用、鎮痛作用などが期待できます。
シトロネラの詳細や虫よけスプレーのレシピは下記ページをご参照ください。
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シトロネラの香りと作用・おすすめの使い方
シトロネラ(Citronella)の香りと作用 おすすめの使い方 夏になるとシトロネラとつく商品名のスプレーやキ ...
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ゼラニウム 甘くフレッシュな花の香り
ゼラニウムは比較的安全性の高い芳香成分で構成されており、スキンケアへもよく使われる精油です。
ゼラニウムはシトロネラ―ルを含まず、刺激性の低いシトロネロールを多く含んでいます。
シトロネラ―ルを含まないためダニに対する忌避効果は期待できないかもしれません。
しかしながら、その分皮膚刺激は低いため、虫よけジェルなど肌に直接塗布するタイプを作りたい場合には最適です。
なお、9種類の植物精油(アネトール、クローブ、シトロネラ、スペアミント、ゼラニウム、ヒノキ、ペニーロイヤル、ローズ、ユーカリ)のイエバエに対する忌避効果を調べた実験があります。
その際は、ゼラニウムが95.1%と最も高い忌避効果を示したことが確認されています。
ゼラニウムについて詳しくは下記ページをご参照ください。
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ゼラニウムの香りと働き・活用法
ゼラニウムの香りと働き おすすめの使い方 「柑橘の精油は持ってるけど、次に買い足したら便利な精油ってなにがあるのかなぁ?」 「 ...
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ユーカリ・シトリオドラ(レモンユーカリ)
ユーカリ・シトリオドラはアルデヒド類を多く含み、皮膚刺激に注意が必要です。
アルデヒド類の割合が高いため、保存状態に気を配りましょう。
しかしながら、2種の忌避成分の割合は高く、シトロネラやゼラニウムより蚊に対する忌避作用は高いといえそうです。
また、蚊など対象を問わず忌避作用があると考えられているβ-カリオフィレンも微量ですが含まれています。
肌に直接つけるような使い方をする場合はごく低濃度にとどめるほうがよさそうです。
虫が多い公園やキャンプ場へスプレーにして持参し、テントの開口部などに振りかけておくとよいでしょう。
ユーカリにはケモタイプ(化学種)があります。
それぞれで作用が異なりますので、下記ページをご参照ください。
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ユーカリの香りと働き・活用法
ユーカリ(Eucalyptus)の香りと作用 おすすめの使い方 ユーカリといえば花粉症に感染症対策!   ...
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その他、小皿に精油を数滴たらして窓辺に置いておくだけでも、太陽の熱で気化して効果的に香りますよ。
害虫の忌避作用UP!
柑橘系や樹木系の精油とブレンドを
ゼラニウムは安全性が高く利用用途も多いのでまず検討されるかと思います。
「ただ、虫よけ効果が低くてもちょっと・・・」というときは、リモネンを含む柑橘系やα-ピネンを含む樹木系の精油とブレンドしてみてください。
リモネン、α-ピネンにも害虫忌避作用を期待できることが下記の実験から示唆されています。
忌避作用を高めるために加えてもよいですし、シトリオドラなど刺激のある精油の利用を少量にとどめるためにブレンドする使い方もよいでしょう。
【必読】アロマテラピーのルール
アロマテラピーを行うにあたっては下記を守りましょう。
アロマテラピーのルール
- 原液を皮膚につけないようにしましょう。
- 精油を飲用しないようにしましょう。
- 精油が目など粘膜部分に触れないようにしましょう。
- 火気に注意しましょう。
- 子どもやペットの手の届かない場所に保管しましょう。
- 定期的に使用状況をチェックしましょう。
また、お子様や高齢者、妊娠中の方には考慮していただきたい項目がありますので、こちらをあわせてご一読ください。
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アロマテラピーのルール(精油を安全に活用するために)
アロマテラピーのルール~精油を安全に活用ために~ 精油は、植物から抽出した天然の物質だからと言って100%安全だというわけではありません。 ...
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おわりに
シーンや人に合わせて精油をチョイス
今回は、蚊に対する忌避成分を多く含む精油についてみてきました。
ココがポイント
必要となるシーンや人をイメージして最適なものを選びましょう。
- 虫が多い屋外?それとも屋内の虫よけ?
- 虫よけスプレーかジェルタイプが良いか?
- 使いたい対象は敏感肌の人?
- 使用する人はお子様?大人??
植物は生き抜くために、害虫から身を守るために忌避成分を持つ香りを作り出したといわれています。
心地よい香りを楽しみながら虫刺されも気にせず過ごせたら素敵ですよね。
なお、精油は抽出の過程で濃縮され、自然にあるときよりはるかに強い力を持ちます。
それぞれの短所と長所をおさえて、自然の恵みを有効活用してみましょう。
精油は体と心に働きかける力をもっています。
しかしながら、「医薬品」、「医薬部外品」、「化粧品」ではありません。
香りを楽しみながら、健康維持・増進、美容を目的にアロマテラピーを取り入れてみてください。
心身の状態が悪い時には速やかに医師の診察を受けるようにしましょう。