ジャスミン・サンバックの香りと働き
ジャスミンの精油といえば、一般的にはJasminum grandiflorumから抽出されるジャスミン・アブソリュートを指します。
なお、ジャスミンティーの香りづけに使われるマツリカ(茉莉花)からも精油を得ることができます。
それが「ジャスミン・サンバック」です。
ジャスミン・サンバックについては情報量が少ないのですが、私の知る範囲でご紹介してみたいと思います。
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ジャスミンティーの香りづけに使うマツリカ
マツリカとはジャスミンの一種で、西アジア~東南アジア原産の低灌木です。
灌木(かんぼく)とは:低木。高木以外の樹木のこと。
蔓状に張った枝から八重咲きの白い小花を咲かせます。
インドネシアやフィリピン、インドなどでは、結婚式など喜ばしい場面で使用されてきた神聖な花で、陶酔させるような甘い香りがします。
日が落ちている時間帯のほうが強く香りため、「夜の女王」と呼ばれることも。
膨らんだ花蕾(からい)を乾燥させジャスミンティーの香りづけに使うほか、薬用にも使われます。
ジャスミン・アブソリュートとの違いは?
モクセイ科にはオリーブ属をはじめ、ヒイラギなどのモクセイ属、ジャスミン属など計25属があります。
そして、ジャスミン属には約200種の植物が含まれ、うち100種以上が世界各地で栽培されています。
精油として流通しているものは2種。
一般的にジャスミンの精油として知られるのはロイヤルジャスミン(Jasminum grandiflorum)から抽出されるジャスミン・アブソリュート。
そして、マイナーですがマツリカ(Jasminum sambac)から抽出されるジャスミン・サンバック(アブソリュート)です。
植物名 | ロイヤルジャスミン | マツリカ(茉莉花) |
別名 | スパニッシュジャスミン、オオバナソケイ(大花素馨)、タイワンソケイ(台湾素馨) | アラビアジャスミン |
学名 | Jasminum grandiflorum | Jasminum sambac |
原産地 | 中国南部、南アジア、アラビア半島、北アフリカ | 西アジア~東南アジア |
主産地 | エジプト、インド | 中国、インド、東南アジア |
特徴 | 花が大きい
主に香料用に栽培されているジャスミン |
八重咲で小ぶりの花
ジャスミン茶の香りづけに使用 |
(ゲルセミウム科のカロライナジャスミンやガガイモ科のマダガスカルジャスミンなど)
※Jasminum officinaleといえば、一般的にはコモンジャスミンを指しますが、ロイヤルジャスミン Jasminum grandiflorumのシノニム(異名)でもあります。なお、アロマテラピー検定テキストではジャスミンの学名ではJasminum grandiflorumとJasminum officinaleの2種を紹介しています。
陶酔するような甘いマツリカの香り
深夜に咲く白い花の魅惑的な甘い香り。
ジャスミン・アブソリュートと比較すると爽やかさがあり、やや華奢な印象です。
魅力的な香りをもつジャスミンの秘密
華やかさと輝かしさを備えた高貴なフローラルノート・ジャスミン。
そのジャスミンの芳香成分には、微量のインドールやスカトールが含まれています。
これらは実は、強烈な糞尿の香りを持つ成分。
と同時に、ごく低濃度に希釈することで得も言われぬ素晴らしい香りに変わります。
これが、代用が効かないジャスミンらしい魅力にもなっているのですね。
スカトールはジャコウネコ(霊猫)から得られる動物性の香料シベットにも含まれる香り分子です。
シベットについては「歴史を深掘り!香り好きのアラブで好まれた香り【動物編】」にて解説しています。
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ジャスミン・サンバックの基本情報
媚薬的な作用を期待して香油として用いられることもあり、深い瞑想に誘います。
8000輪もの生花からたった1gの精油しか採油できないため、非常に希少価値の高い精油です。
体温とともに香りが立ち上るので、香油、フレグランスとして心理的作用を期待して使われます。
緊張をほぐし、気持ちを前向きに明るくさせてくれます。
原料植物名:マツリカ(茉莉花)
科名:モクセイ科
学名:Jasuminum sambac(アラビアジャスミン、茉莉花/マツリカ))
主な産地:中国、インド、東南アジア
抽出部位:花
精油製造法:揮発性有機溶剤抽出法
色:オレンジ色
主な成分:α-ファルネセン、インドール、リナロール、アントラニル酸メチル 他
利用方法:芳香浴のほか、香油などで使用。
ジャスミン・サンバックのブレンドのコツ
香りの系統:フローラル系
香りのノート:ミドルノート
香りの強弱:中
相性の良い精油:シトラス系、フローラル系、スパイス系の精油。
ジャスミン・アブソリュートと同様、シトラス系やフローラル系の香りと相性が良いとされています。
ジャスミン・サンバックに期待される主な作用
強壮作用
抗うつ作用
抗炎症作用
鎮痙作用
鎮静作用
鎮痛作用
通経作用
分娩促進作用
他
薬理作用について詳しくは下記ページにて解説しています。
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【必読】アロマテラピーのルール
アロマテラピーを行うにあたっては下記を守りましょう。
アロマテラピーのルール
- 原液を皮膚につけないようにしましょう。
- 精油を飲用しないようにしましょう。
- 精油が目など粘膜部分に触れないようにしましょう。
- 火気に注意しましょう。
- 子どもやペットの手の届かない場所に保管しましょう。
- 定期的に使用状況をチェックしましょう。
また、お子様や高齢者、妊娠中の方には考慮していただきたい項目がありますので、こちらをあわせてご一読ください。
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ジャスミン・サンバックの使用にあたり気をつけること
妊娠中・授乳中は使用を避けましょう。
フレグランス以外の用途で肌に使用するのは控えましょう。
香水・香油作りのほか芳香浴メインで使うのがよさそうです。
おわりに 甘い花の香りに癒されて
今回は、ジャスミンティーの香りづけに使われるマツリカから得られるジャスミン・サンバックをご紹介しました。
高価な精油ですが、特別な日にまとう香りとして楽しんでみてください。
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精油は体と心に働きかける力をもっています。
しかしながら、「医薬品」、「医薬部外品」、「化粧品」ではありません。
香りを楽しみながら、健康維持・増進、美容を目的にアロマテラピーを取り入れてみてください。
心身の状態が悪い時には速やかに医師の診察を受けるようにしましょう。